親権者同士の子の連れ去りが刑事罰となった判決文

3年前に,このサイトで実子誘拐の刑事告訴を呼びかけた頃には,実際に刑事告訴をする人も殆どおらず,受理情報も皆無と言って良い程だった。

何とか探して見つけた判例は,連れ去りでは無く,連れ戻しばかりだった。

刑事事件として違法とされなくても,民事で不利に扱われれば実子誘拐被害は無くなる筈だけれども,連れ去られ親が民事で救済される判例で見つかるのは,母親が被害のものばかりだった。

法理を考えれば,連れ戻しが違法なら当然に連れ去りも違法な筈だし,父親の連れ去りが不利に扱われるなら,母親の連れ去りも不利に扱われるべきであることは当然だが,そうはなっていない。

ところが,昨年2月の宮崎で同居母親の子の連れ去りの刑事告訴が受理されたのを皮切りに,続々と受理情報が増え始め,この1年間で20件にも及んだ。

被害当事者団体も実子誘拐の刑事罰を求め意見書の提出をするようになった。


告訴をしに行くと,判断の付かない警察官が他署の受理事実を知りたがることがあり,最近の告訴受理事実の情報は,告訴状受理判断に悩む警察官に大いに参考になっているという。

ところが,受理後の動きはまだまだ先の見えない状況が続いている。「起訴猶予」ならまだしも,「罪とならず」や「嫌疑なし」などの不起訴が続けば受理事実は一時の傾向で終わってしまう。

(*一般的には不起訴理由の9割が起訴猶予=犯罪の事実を認めるが起訴を見送る)

受理事実だけでは無く,刑事罰が確定した判例が改めて必要とされている。

同居からの母親の連れ去りでは無く,別居父親の連れ去り事案でばかりではあるが,判決の理由には,母親による同居からの連れ去りにも適用されるべき記載があるので紹介する。

親の連れ去りが刑事罰となった判例

(事件の概要)

離婚係争中に母の監護下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき違法性が阻却されないとされた事例

(裁判経過)

第一審 平成16年3月9日 青森地裁八戸支部 判決 平成14(わ)170号

量刑 懲役1年

上告

平成16年8月26日 仙台高裁 平成16(う)69号 未成年者略取被告事件

(判決の理由:抜粋)B(被告の妻)C(被告の子)

「刑法224条は,その主体を限定しておらず,また,同条にいう略取とは,暴行,脅迫により,人をその保護環境から切り離し,不法に自己または第三者の実力支配下に置くことを言うのであるから,親権者であるが故に,事情の如何にかかわらず,当然に,その子について未成年者略取罪の主体となり得ないとか,略取をしても不法性を欠くとはいえないところ,本件では,被告人は,Cの共同親権者であるとはいえ,前期認定事実のとおり,Bとの夫婦関係が破綻する仲,Cが,平成13年9月15日以降,本件被害に遭う同14年11月22日までの訳1年2か月の間,1〈7〉の被告人らにより沖縄に連れて行かれた10日間を除き,青森県八戸市内のBの実家で一方の共同親権者であるB及びその両親に監護,養育されて平穏に生活していたのに,保育園からの帰りを狙って,1〈9〉のとおりCw連れ去って,Bらの保護環境から一方的に離脱させ,そのころから同日午後10時27分ごろまで車内に止めて自己の実力支配下に置いていたのであるから,被告人がCを略取していることは明白である。所論は採用できない。」

上告

平成17年12月6日  最高裁判所第二小法廷 平成16(あ)2199号 未成年者略取被告事件 

(判決の理由:抜粋)

「被告人は、離婚係争中の他方親権者であるBの下からCを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって、そのような行動に出ることにつき、Cの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから、その行為は、親権者によるものであるとしても、正当なものということはできない。また、本件の行為態様が粗暴で強引なものであること、Cが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること、その年齢上、常時監護養育が必要とされるのに、略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると、家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば、本件行為につき、違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり、未成年者略取罪の成立を認めた原判断は、正当である。」


一般的な,離婚弁護士らの教唆する連れ去りは略取(暴行脅迫によるもの)では無く,偽計を用いた誘拐であり,別居からの連れ去りでは無く,同居からの連れ去りであるので,上記で紹介の判例は,同様態の事件ではありませんが,判決の理由に親権者だからと言って違法性が阻却されないことが明記されている部分は流用できると思います。

実際に9年前に,同居中の妻に子どもを偽計を用いて連れ去られた父親は,この判例(平成16(う)69号)を告訴状に添付し受理され,不起訴とはなりましたが,起訴猶予(連れ去りの違法性は認められた)という処分理由を得ました。

刑法224条が,略取では無く,偽計を用いた誘拐に適用されるように泣き寝入りせず告訴していき,離婚に伴い誘拐の無い社会を実現させましょう!

直近事案では,連れ去り実行日から4年以上経っている事案や離婚が成立し親権を失っている父親からの告訴状も受理されております。

今までの受理案件でも,警察からの離婚弁護士の悪質性を疑問視する発言が複数聞かされており,今月は遂に,刑法225条営利目的の拐取で離婚弁護士への告訴状が受理されました。

営利目的の誘拐犯である脱法弁護士らによる親子引き被害に対し,毅然と行動を起こし続け,何としても私達の世代で終わらせましょう!


【参考判例】*一般的な離婚弁護士の行う連れ去り事案ではありません。
平成13年7月12日 甲府地裁 判決 平成12(わ)388号・平成12(わ)429号

国外移送略取・器物損壊被告事件

平成18年10月12日 最高裁第一小法廷 判決 平成17(あ)2437号

未成年者誘拐被告事件

平成29年1月27日 札幌地裁 判決 平成28(わ)144号

住居侵入,殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反,未成年者略取誘拐事件

#実子誘拐 #連れ去り #拉致 #誘拐 #拐取 #略取 #刑法224条 #刑法225条 

過去を取り戻す未来を創る

愛する息子と暮らしていた日常を取り戻したい一人の父親として 配偶者による子の連れ去り問題を解決したい一市民として

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