実子誘拐における婚費請求への反論判例

以前に,婚費請求への対応例を紹介したところ,随分と賛否のご意見が多く見受けられた。

何をやっても無駄,婚費は素直に払うべきという当事者達の意見も多く

裁判官も「婚費は淡々と決めます」と安易に算定表通りで決着させようとする。
しかし,それでよいのだろうか,予算的な問題で養育に支障が出るようであれば

従前の生活に一旦戻し,予算も含めて別居や離婚に伴う養育計画を話し合うべきだろうし

実子誘拐をビジネスにしている弁護士達に,楽な金儲けと認識させ,事件を増やしていることに繋がらないだろうか?(15%ぐらいの成功報酬フィーを設定していることが多い)
DVなど有責性ある別居の当事者は別として,偽計を用いた突然の連れ去りによる被害者は安易に請求に応じるべきでは無いと考える。

共同親権運動ネットワーク(Kネット)では,この件について声明をあげている。


準備書面などでの反論としていくつかの判例を下記に紹介する。
安易に応じず,実子誘拐金銭搾取弁護士らを増やさないことを期待する。


【有責配偶者からの婚費分単請求について】

東京高等裁判所決定昭和57年12月16日(昭和57年(ラ)821号)では,「民法760条,752条に照らせば,婚姻が事実上破綻して別居生活に入ったとしても,離婚しない限りは夫婦は互に婚姻費用の義務があるというべきであるが,夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し,その後同居の要請にも全く耳を貸さず,かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行わず,そのために別居生活が継続し,しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には,前記各法条の趣旨に照らしても,少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ,同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるというべきである。」とされている。


【 預金の持ち出し等,共同財産の費消と養育費について】

大阪高等裁判所決定平成11年2月22日(平成10年(ラ)756号)では,「離婚時に現に(申立人:家を出た妻)が保管している預金等は,財産分与の手続きによって分配すべきである。しかし,生活費に充てることについての了解があり,現に生活費等にあてられ既に費消された預金等は,これが婚姻費用の分担と関係がないとはいえない。財産分与の際には個々の婚姻費用の清算の趣旨をも含んで分与額が定められる。しかし,そのために,婚姻中から継続していた婚姻費用の分担の審判手続きによって過去の婚姻費用の分担を命ずる際に,既に生活費等に費消された夫婦共同財産の額を考慮することが許されなくなるわけではない。」とされている。

札幌高等裁判所決定平成16年5月31日(平成16年(ラ)45号)では,「(申立人:家を出た妻)が共有財産である預金を持ち出し,これを払い戻して生活費に充てることが出来る状態にあり,(相手方:夫)もこれを容認しているにもかかわらず,さらに(相手方)に婚姻費用の分担を命じることは,(相手方)に酷な結果を招くものといわざるを得ず,(中略)したがって,現時点においては,(相手方)には婚姻費用分担義務はないというべきであるから,(申立人)の本件申立ては理由がない。」とされている。



【信義則に照らした婚姻費用分担請求について】
最高裁判所決定平成17年6月9日(平成17年(許)10号)では,「(申立人:別居した妻)は,有責配偶者であり,その(申立人)が婚姻関係が破綻したものとして(相手方:夫)に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは,一組の男女の永続的な精神的・経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し,最早,夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから,このような(申立人)から(相手方)に対して,婚姻費用の分担を求めることは信義則にてらして許されないものと解するのが相当である。」とした抗告審通り,許可抗告を棄却している。


[浦和地方裁判所昭和55年(ワ)第609号婚姻費用分担義務不存在確認請求事件昭和57年2月19日]

夫婦が別居し、婚姻関係が事実上破綻している場合でも、法律上婚姻が継続している限り、原則として夫婦相互に婚姻費用の分担義務があり、例外的に婚姻関係の破綻若しくは別居の原因が専ら夫婦の一方のみにある場合には、その者は、相手方に対し、婚姻費用の分担を請求することはできないと解すべきである。



参考まで。

過去を取り戻す未来を創る

愛する息子と暮らしていた日常を取り戻したい一人の父親として 配偶者による子の連れ去り問題を解決したい一市民として

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